最注目「今月の逸品」 vol.
19
コポー ショコラ
飲食店はエンターテイメント。
菓子製造に携わる人であれば菓子用語として当然知っているはずの「コポー」。フランス語でコポーとは木屑を意味し、チョコレートを薄く削ったものやカールするように削った装飾用のチョコレートのことをコポーといいます。バラのように仕上げたコポーをケーキにデコレーションすると、なるほどとても気品の高いケーキに仕上がります。ただ、花びらのような美しいコポーをペティナイフなどでチョコレートを薄く削り取りカールさせて作るには、当然ながら長年の技術が必要であり、菓子初心者やアルバイトにはなかなかといったところが正直なところです。
ところがこの職人の高い技術が必要とされるコポーを、あるたった一つの小さな機器を使うだけでだれでも至極簡単に、更にはお客様の目の前で作ることが出来ます。その機器とはジロールと呼ばれるもの。このジロールは通常チーズを削ることに使われており、ジロール茸(あんず茸)から由来されている名の通り、この機器を使うとフリル状のチーズを簡単に削ることが出来ます。このパフォーマンス能力は絶大で、この機器専用である『テット・ド・モワンヌ』という円筒形のチーズの売り上げは、このジロールのおかげで一気に数倍も伸びたとか。このジロールにチーズと同じような円柱状のチョコレートの固まりをセットし、くるくるとハンドルを回転させると、フリル状の薄いチョコレートが簡単に作りだされ、それがまさしくお手軽簡単コポーの出来上がりです。されど簡単といえども仕上がりは菓子職人にも劣らない美しさの仕上がりなのです。
フランスにおいてはこのジロール専用のチョコレートが売られており、パフォーマンス性と共に様々なフレーバーのチョコレートを楽しむことが出来ます。先日訪れたパリで今話題の菓子店「Un demanche a` paris」でもミニタイプのジロールとチョコレートを見かけました。 しかしまだ日本ではなかなか目にすることのないジロールで作られるコポーですが、この出来立てのコポーを楽しめるカフェが昨年の秋、東京都府中に開業しました。
店名は「カフェコンフォート」、ユーシーシーフードシステムズが運営する新しい店舗です。ここでクレープのようでワッフルのような焼き目のついた新しいデザート、『クレール』をオーダーすると、香ばしく、もっちりと焼かれた薄い生地のクレールがお客様のテーブルに焼きたての香りと共に運ばれてきます。その上に目の前で、コポーを削ってくれるパフォーマンス性は、驚きと楽しさをもち持ち合わせた最高の瞬間で、多いに食欲をそそられます。さらにここ「カフェコンフォート」のコポーは、オリジナルのチョコレートに仕上げており、口に入れるとアーモンドの香りと、チョコレートの優しい味わいがゆっくりと広がり、スーッと溶けてゆき、今までにはない、何ともいえない感覚が広がります。
コポーだけではなく、盛付やデセールの仕上げを目の前で見る、握りたてのお寿司を頂くなど、職人や料理人、そしてサービススタッフによって目の前で繰り広げられる一流の料理のパフォーマンスは、その手業を見ているだけで心がワクワクし、食材が料理へと変化していく様は本当に何よりのパフォーマンスであり、店で食を頂くという楽しさの一つであり、人生の楽しみであることだと感じずにはおれません。
この料理のパフォーマンス、先日訪れたフランスパリの三ツ星店にて一流のパフォーマンスを体験してまいりました。その内容はまたこのコラムでご紹介してまいります。